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ひとりよがりの博物学

世の中の博物を愛で奉る

ヴィクトリア&アルバート博物館 Victoria and Albert Museum

イギリス屈指の総合博物館

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 Natural History Museumのすぐ近くに、このヴィクトリアン&アルバート博物館があります。

 

館内の広さはロンドンのミュージアムの中でも屈指であり、展示内容も絵画のみならず、古今東西の衣装やファッション、歴史、生活用品などを展示しています。規模でいえば大英博物館には及ばないものの、より人々の社会生活に密着したドレスや音楽など、展示に魅力的な幅があります。

 

博物館と美術館の性格を兼ね揃えた、まさに総合博物館といえるでしょう。

 

芸術とデザインの原理のための知識をめざして

V&Aは、もともとはThe South Kensingtom Museumとして、1857年に誕生しました。その目的は、"knowledge of the arts and of the principles of design"を向上するための教育施設でした。アートと並んでデザインの探求が重視されていたことがわかります。

 

館内の3階の回廊付近に、V&Aの成り立ちが詳しい説明が展示されています。

 

Luxury, Liberty & Power

大英博物館の展示が主に古代から近代までのイギリス史を扱うのに対して、V&Aでは中世の宗教改革から現代の製品、ファッションに至るまでの各時代におけるイギリスの歴史の特徴をわかりやすく解説しています。

 

例えば、イギリスといえば紅茶のティー文化が盛んでありますが、このような流行が生まれたきっかけは何だったのでしょう。

 

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こうした食文化の発展は主に18世紀後半から19世紀前半にかけて起きたと考えられるようです。そもそも上の写真のようなティーセットを揃えるためには、安価な品々を大量生産するための工場や機械技術の発展が不可欠でした。すなわち、産業革命を筆頭とする産業の発展なくして、ティー文化は成り立たなかったといえるでしょう。

 

また、この時代に古代ギリシャの研究や調査発掘が進んだことも、大きな要因であったようです。一見するとギリシャと紅茶には関係がないように思えますが、ギリシャの人々が重視した、余暇を楽しみ充実させようとする精神が、手本とされたようです。

 

もちろん、海外からもたらされた紅茶の原料や砂糖、あるいは陶磁器といった生産品も見逃せません。イギリスがスペインやオランダを後追いし、海外に進出した結果、多くの外国の文化や貿易品がイギリス国内にもたらされました。

 

特にお隣のフランスでは、ルイ14世の治世下において、豪奢で華美な装いやふるまいが流行り、こうした生活様式はヨーロッパに広く普及していきました。

 

この時代、少なくない人々が徐々に貧困から解き放たれ、生活を美しく高価な物品で快適にすることを覚えたのです。

 

彫刻の空間展示

V&Aでは彫刻物も見事に展示されています。これらは、一つ一つが順番に並べられているのではなく、ある空間を満たし、彩るような配列で展示されています。

 

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イギリスやヨーロッパの展示の特徴は、展示品の一つ一つに焦点を当てるというよりは、それらの展示品を利用して空間をデザインすることに重点を置いているように感じられます。そうしたことを可能とするのは、やはり多くの貴重な資料をふんだんに所蔵しているからでしょう。また、博物館や美術館自体が貴重な歴史的建築物であるため、内装をも含めた展示を鑑賞者に提供できるような工夫がなされています。

 

圧倒的な歴史と、圧倒的な展示品、そして圧倒的な建築物。ヴィクトリアン&アルバート博物館は、まさに博物館の始原となった「珍奇の部屋」を連想させるような、素敵なミュージアムです。

 

2017年3月5日 雛崎 尋