ひとりよがりの博物学

世の中の博物を愛で奉る

Seaford Museum

かつての軍事施設が博物館に

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Seaford Museumは、セブン・シスターズという丘陵の岸壁が有名な海沿いの町、シーフォードにある博物館です。

 

この付近の港町からはフランス行きの船が出ており、フランスとの関係が深い土地柄です。イギリスとフランスは、百年戦争などの例もあるように、隣国同士であり、歴史的な因縁も浅からぬ間柄です。

 

実際にこの博物館もかつては、フランスから進行してくる軍団を監視するための見晴台や要塞として機能していたようです。

 

また、第一次世界大戦以降は、イギリス軍の練兵のための訓練場所としてシーフォードは利用されており、それらに関連した展示もありました。

 

雑多で穏やかな展示室

 

この円形の建物の入り口から下に降りていくと、展示室があります。中はけっこう奥行があって、意外に広く感じられます。

 

展示では、シーフォードの軍事的歴史を扱っていますが、その他にも、イギリスの近代における服飾や生活文化の展示もありました。

 

良く言えば幅広い展示を扱っているともいえますが、率直にいえば、展示にあまりまとまりがなく、雑多な印象も受けます。

 

例えば、なぜかラジオのコレクションの展示がされていましたが、特に他の展示との関係が説明されていないので、なんでこんなところにあるのだろう、と不思議に思いました。

 

けれども、どこか懐かしく温かいような空間だと感じました。おそらく個人の寄贈によって形成されたコレクションが、まとまりがあるような、ないような形式で展示されています。古いものが自然と集まった結果として出来上がった博物館、というような印象を受けます。

 

説明が少ない分、これは何だろう、あれは何だろうと想像が膨らみますし、こんな古い物がまだあったのか、というような率直な驚きも生まれます。近代的な博物館が切り捨てていった、見知らぬ物が集まることの不思議さ、珍奇さといった感慨が、この博物館には未だ残されているように思えるのです。それはまるで「珍奇の部屋」であるように。

 

古びた過去はどこへ行く?

 

昨今の世の中では、古い物はどんどん捨てられ、新しい物に置き換わっていきます。古びた物たちは、どこへ行けば良いのでしょうか。そうした古びた過去たちをわたしたちは捨て去ってしまって良いのでしょうか。

 

博物館の維持は決してたやすいものではありません。ある地域にこのような施設を設立すること、そして維持していくことによって、ようやく過去の物たちは行き場を得るのです。そのことで何か経済的な利益が生まれることはないかもしれません。けれども、わたしはこのような博物館が、きちんと残されていることに、とても嬉しくて安心する想いを抱くのです。

 

2017年3月7日 雛崎 尋