博物学探訪記

奥会津より

さかなのば

港町の魚屋さんで魚をつまみにお酒を飲んだら最高だよね

という趣旨のイベントに、2017年12月10日に参加しました。

企画は小名浜フリーライターである小松理虔さんで、主催の場所はさんけい魚店*1という小名浜にある魚屋さんです。

 

わたしが福島で生活するときに、この人の生き方を参考にしようと思った方が小松理虔さんです。わたしはお酒も好きですし、魚を食べながら日本酒を楽しむついでに、ぜひ一目、理虔さんを見てみよう(できたら話をしてみよう)と、勇気をふりしぼって参加してみました。

 

当日は郡山市からいわき市に向けて出発し、いわき市草野心平記念美術館、いわき市暮らしの伝承郷、いわき市立美術館を見学した後で、会場近くのビジネスホテルにチェックインを済ませ、イベントに臨みました。

 

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会場は老若男女が笑顔でさかな(魚・肴)とお酒を楽しんでおり、あぁ、近所にこんな所があったら日々の鬱憤を晴らすにはもってこいだろうなぁ、と羨ましく思います。

 

わたしは明らかに「いちげんさん」であり、微妙に所在がないので、普段よりもとても早いペースでお酒を飲み、財布の中身をすり減らしていました。お酒を出してくれるお兄さんが丁寧に「このさかなにはこのお酒があう」と紹介するままに、杯を飲み干していました。

 

ハイペースの理由はもう一つあり、会場にいる理虔さんになんとか話しかけられないだろうか、でも胃がひっくり返りそうに緊張する、酒をのまねば、という意識が働いておりました。というのも理虔さんに話しかける地元の方らしき人々が絶えなかったので、いま行くと迷惑になるかなぁ、という不安がぬぐえなかったのです。いやまぁ自分が臆病なだけなんですけど。

 

ようやく声をかけることに成功し、お話をさせていただきました。理虔さんはまず自分が動くということを心がけていらっしゃるようで、何もないところに何かを生み出し育む、ということを続けたいとおっしゃっていました。その意味では一つの場所にこだわるのではなく(もちろんご家族の都合もあるので完全に自由になれるわけではない)、新しい場所に飛び込んでいきたい、というお考えであるようです。それは、場を立ち上げた自分がやがて地元の権威になってしまい、せっかく開いた場所が再び閉じてしまうことを懸念されているようでもありました。

 

あぁ、世の中はこのような人によって動いているのだと思いました。地域をかきまぜ、場所を、人を外に開かせる。そうしなければ固定化した価値観のもとで地域は衰退にはっきりと向かってしまう。地方を転々として生活してきたわたしにも思い当たることが多々あります。

 

動く、というのはとても大事なことです。身体を動かして、自分の視界を別の場所に、別の方角に向ける。見たことがない景色を見る。右に行ったことがなければ、左には行けない。下に行ったことがなければ、上には行けない。

 

イベントの途中で店主の方がお話をされました。イベントを開くことによって、これまで来なかった人がお店を訪れるようになった。さかなをおいしいと伝えてくれた、とおっしゃっていました。自分たちの住む場所、言い換えれば足元にだってまだ見たことのない景色が広がっています。普段は見ることがない魚の流通や加工を担う魚屋さんの営み。スーパーマーケットだけがわれわれの生活に関わっているわけではない。さんけい魚店のような魚屋さんがあるからこそ、わたしはお酒を片手に、さかなを箸でつかむことができる。

 

魚屋という場所から、わたしたちの日々の営みをもう一度考えてみよう。いま食べているものがどのようにしてわたしたちの口に運ばれるかに思いをはせてみよう。それが自分の生のありかを、地域との関わりを見直すことにつながるはずだ。そんな思想があらわれているイベントだったと思います。

 

理虔さんとお話をすませ、血中にも十分にアルコールを送ったわたしの口はいつのまにか滑らかになり、小名浜の地元の人とも少しお話することができました。とても嬉しかったな。イベントが終わってもその足で、お酒を出してくれたお兄さんとお話をしていた方2名と共に焼肉屋さんに行って、しめの1杯とお肉を食べました。

 

小名浜の方達と別れ、ホテルの部屋に戻り、シャワーをあびる

良い夜だったな、と思って、床についた。