2021-03-30から1日間の記事一覧
はじめに 押井守の映画には、2020年度の前期に読んだニーチェの『善悪の彼岸 道徳の系譜』(筑摩書房, 1993年)に連なるような思想があらわれていると思う。個人の主体化とそれに伴う責任の問題や、その問題を取り巻く社会情勢への見方に両者の類似点が垣間…
1887年に刊行された『道徳の系譜』は、副題および巻頭言にあるように、「一つの論駁書」であり、「最近公刊された『善悪の彼岸』の補遺および解説」として世に出た。ゆえに、ニーチェが表現手段としてこだわったアフォリズムの形式が影を潜め、学術論文のよ…